
景気回復とともに、長期間低迷を続けていた不動産事業が活性化している。その中でも、シティリバイバル事業(都市再生事業)が都市部を中心に好調だ。首都圏の千代田区、港区、渋谷区、新宿区、中央区におけるビルの建て替え、汐留や防衛庁跡地に代表される大規模再開発事業はその代表だ。近年活発化している企業のM&Aにより、オフィスビルや商業施設の需要も増加している。
「レアルシエルト社の事業の中核は、老朽化した建物や遊休不動産を再生し、資産価値の向上を図ることにある。このような事業には地権者の複雑な権利関係がつきものだが、同社はそうした権利調整や行政との折衝なども行い、土地の購入から企画・設計・施工・販売・運用・管理までを一貫して行っている。こうして、不動産としての資産価値を高めた物件はオフィスビルや商業施設、あるいはマンションとして、投資の対象となる。不動産の流動化は投資の促進にもつながる。
不動産物件の資産価値を創造するために、その基盤となる土地の価値を見極め、卓越したプロジェクト遂行能力により、同社の顧客となる地権者、不動産販売会社、投資家などのニーズを汲み取り、全方位的なマーケット戦略で、不動産商品と資産価値創造サービスを顧客に提供している。
とはいえ、2003年に設立された若い会社であるがゆえに、他社との競争は激しく、業務の効率化・スピードアップが、同社の競争力を維持する生命線であるとも言える。同社は競争力を維持するために、惜しみない努力を払ってきた。
同社が現在抱えている課題として、設計部門の効率化があった。デベロッパーの設計部門であるため人手が少なく、また多くの仕事をこなさなければならない。この問題を解消するため3次元CADの導入を考えていた。
同社ではこれまで、プロジェクトマネジメント部門の設計業務に2次元CADソフトのAutoCADを使用してきた。かつて、AutoCADの延長上にある3次元CADソフトへの移行を試みたこともあるが、諸般の事情からうまくいかなかったという経緯がある。その後は、3次元CGソフトを併用してきたという。
「当社ではAutoCADと3次元CGソフトを併用してきましたが、その状態では、他社から2次元データを受け取った場合、まずレイヤーの整理を行ったうえで、3次元データに変換しなければなりませんでした。そのため2次元と3次元で別々にデータ管理を行う必要があり、効率が悪かったのです」と、事業本部プロジェクトマネジメント部マネージャーの山際東氏は抱えていた課題を語る。
「私は米国の事務所と協力して仕事をした経験があります。その中で、CADは製図の道具ではなく、業務を効率化し、生産性を上げるものであるという考え方を知りました。そこで日頃から効率のよいCADソフトを探していたのです。そんな時に、大塚商会のセミナーでAutodesk RevitBuilding(以下、Revit Building)に触れる機会がありました。このソフトは操作性が良いことと、これまでのCADソフトとは異なり2次元と3次元の表現が分けて考えられているので、3次元の部材に2次元の図面を追加できるといった点などから、導入を考え始めました」と山際氏は語る。
Revit Buildingの特徴のひとつに、CADソフトに特有の、複数のレイヤーという概念がないことが挙げられる。レイヤーは文字、寸法といった要素から構成されるもので、建築図面はそれらの要素を重ねてくことで1枚の図面として完成する。通常、ひとつの図面ファイルは、複数のレイヤーで構成されている。
「検討した結果、CADソフトに特有のレイヤーという概念がなく、建築部品・部材などを誰が作図しても、共通の仕様で描くことができるという点や、データの一元管理ができるという点に大きなメリットを感じました。また、自分のイメージに比較的近い、作業効率のよいソフトであったことから、導入を決めました」と山際氏は語る。同社は2006年4月にRevit Buildingを導入した。
とはいえ、レイヤーという概念がないことについては、デメリットにもなり得るのだという。「すべての図面制作業務をRevit Buildingで完結させる場合には、レイヤーの概念がないことは便利なのですが、CADの作図はレイヤーを拠り所にしているのでRevit Buildingに切り替える際、弊害が生まれやすいのです」と山際氏は語る。
山際氏はRevit Buildingを導入した当初、オンラインヘルプを参照して、実行可能なこと、不可能なことをリストアップし、自分のためのQ&Aを作成しながら、独学で操作方法を習得したという。そのおかげで、山際氏がサポートする形で、もう1人の設計者は、約2週間で操作方法を習得し、1カ月程度で図面を描けるようになったという。
「サポートできる人がいれば、一般的なCADソフトの操作に習熟するよりも、はるかに早く操作方法を習得することが可能だと思います。初期導入がきちんとできれば、他の設計者が移行する際にも、2週間もあれば、問題なく使えるようになるのではないでしょうか」と山際氏はRevit Buildingの使いやすさを語る。
同社はRevit Buildingを比較的スムーズに導入し、部品を共通化した設計データの一元管理、設計業務の標準化は実現したが、完全にRevit Buildingに移行しているわけではない。とはいえ、山際氏は将来的に完全移行することも、すでに頭に入れている。「現在、社内ではJw-cadやVectorWorksを使うオペレーターもいます。また、外注の設計事務所ではその他のCADソフトを使う場合もあります。しかし、将来的にはRevit Buildingに統一していきたいですね」と山際氏は語る。
Revit Buildingが生成する、パースという立体的なイメージは、2次元データとは比較にならないほど多い情報量を持っている。「平面図、立面図、断面図による説明に比べ3次元データは設計意図が容易に伝えられます。投資家のお客様などへのプレゼンテーションにも活用していきたいと考えています」と山際氏は将来の展望を語る。