
株式会社奥村組では2005年の秋に、3次元CADソフトを導入した。それまで全社で使っていた2次元CADのソフトAutoCAD LTから、同じオートデスク社の3次元CADソフトAutodesk Civil 3Dへの移行を開始した。
「大塚商会さんに相談したところ、Autodesk Civil 3Dを提案していただきました。Autodesk Civil 3DならAutoCAD LTの性能はすべて備えているうえに、それまでAutoCAD LTで作成したデータをそのまま利用できます。しかもネットワークライセンス方式で購入できるため、導入コストを大幅に抑えることができる点も魅力でした」と、同社管理本部 情報システム部 情報管理課 次長の五十嵐 善一氏は、3次元CADソフト選定の理由を語る。
たとえば、あるソフトを使う可能性があるコンピュータすべてにインストールし、台数分のライセンス料金を支払うと膨大な金額になる。しかし、同じ時刻に同じソフトがすべてのコンピュータで稼動することは稀だ。一般的には、同時に同じソフトが稼動する割合は、多くても全体の30%程度だと言われている。そこで、同時にそのソフトを利用できる台数の上限を決め、その台数分の料金を支払うのがネットワークライセンスという方式だ。
「当社では最初にAutodesk Civil 3Dを20ライセンス分だけ導入し、まず約100人の技術者が使い始めました。その数カ月後に稼動率を調べてみたところ、20%程度だったので、20ライセンス分を導入したのは妥当な判断だったのでしょう。その後は少しずつ利用する技術者が増え、最近ではAutodesk Civil 3Dを利用する可能性がある者として、500名ほどが登録されています。そこでライセンス数も、2006年末には60まで増やしました」と、五十嵐氏はこれまでの経緯を語る。
最初に使い始めた約100人は、本社などに勤務する技術者だったが、その後に増えた400人ほどの大半は実際の工事現場に配属されている人たちだった。しかし、一般に建設用のCADソフトは、設計用の機能に重点をおいて作られており、実際の工事現場で施工管理のために使う機能はかならずしも充実していない。実際の施工物件は種類が多岐にわたり、それらの施工に必要な機能をすべてCADソフトの標準機能でまかなおうとすると、CAD操作の習得に時間と手間が掛かるからだ。したがって、施工管理に使う機能は、通常、カスタマイズで実装することになる。
そこで、奥村組でもAutodesk Civil 3Dのカスタマイズにより、特定の施工物の管理に適した機能を追加する取り組みを続けてきた。ここでは、それらの取り組みのいくつかを紹介することにしたい。
第一の取り組みとして、同社では山岳トンネルの品質検査にAutodesk Civil 3Dを活用する仕組みを整備した。トンネル内側の覆工コンクリートの検査結果をAutodesk Civil 3Dで整理し、そのデータを社内で管理する一方、そのまま出力して発注者にも提出できるようにした。
「「以前は設計図こそCADソフトで描いても、検査結果はWordやExcelなどで書き、それらの資料を紙の形で保管していました。しかし、このやり方では効率がよくありません。それに年月が経って『コンクリートの剥がれ落ちはないか』など、工事の品質が問われた時、すぐにデータを参照できるようにしたかったのです」と、五十嵐氏は当初の目的について語る。
カスタマイズされたAutodesk Civil 3Dでは、3次元のトンネル設計図からクリックひとつで展開図を作成することができる。何回かに分けて一定間隔でコンクリートを打ち込む位置のスパン割を登録することもできる。
「3次元CADは機能が多いぶん、どうしてもメニューが複雑になります。しかし、現場の人たちはAutoCAD LTの操作には慣れていても、まだAutodesk Civil 3Dの操作に慣れていない場合があります。そこで、必要な一連の作業を、画面の右に追加したユーザーインターフェイスで行えるようにカスタマイズしました。そのため、トンネル工事を経験したことのある人なら、簡単に使い方を説明するだけで、誰でもすぐ使えるようになります」と、管理本部情報システム部 生産システム課 主任の平井 崇氏は操作性について語る。
「トンネル工事の主な発注者は3つあります。国土交通省、JR、道路公団を民営化した道路会社の3つです。検査結果の報告書は、各発注者の要求する書式で提出しなければなりませんが、それぞれの書式をあらかじめ備えているので、検査結果のデータをAutodesk Civil 3Dで一元管理していれば、簡単に要求される書式で提出することができます」と平井氏は語る。
同社はこうしたカスタマイズを大塚商会と協力して行い、2006年6月に完成させた。そしてその年、ふたつのトンネル工事で実際に利用したという。「たくさんのカスタマイズ要求を出したのですが、大塚商会さんは実によく対応してくれました。6月末の納品後も、変更してほしいところを伝え、対応してもらいました」と、平井氏は大塚商会とのサポートを高く評価する。