
株式会社奥村組は、もともと関西を地盤に土木主体で事業を行っていたが、日本経済の急成長によって国や地方自治体のインフラ整備事業が増加し、それに伴い、同社の事業も全国規模で大きく発展していった。しかし、ここ数年、公共事業が大幅に減少したことから、現在は、建築と土木の工事比率がおよそ6:4となり、建築事業を中心とした事業形態に変わりつつある。ただし、土木事業についても、公共事業の工事が完全になくなるわけではないので、設計・施工から保守・メンテナンスを含めたライフサイクル全般をサポートし、付加価値の高いサービスで他社との差別化を図っていく考えだ。また、業務効率を向上するために社内のIT化も積極的に推進している。設計業務や人事・経理などの一般管理業務はもちろん、施工現場においても、自動化施工や省力化施工などITを有効活用した新工法を積極的に導入している。
特に建設業界では、公共事業の透明性向上や業務の効率化を図る目的で、国土交通省が主体となってCALS/EC(Continuous Acquisition and Lifecycle Support/Electronic Commerce)を推進している。国の公共事業ではすでに全面実施されており、各都道府県も2007年度の導入を目指して取り組んでいる。 CALS/ECの導入によって、建設業者は、公共工事を行う場合に電子入札や電子納品が義務付けられることになる。このため、建設業者は設計図面をいかに効率的に電子化・共有化していくかが重要な経営課題のひとつになっている。
そうした中、同社は、かなり以前からCADソフトを導入して設計図面の電子化を推進していた。しかし、各支店ごとに使用しているCADソフトが異なっていたため、相互にデータ共有して効率化を図ることが困難な状況だった。同社では、その解決策として、CADソフトの統一化を図り、2004年8月にオートデスクの2次元CADソフト『AutoCAD LT』を全社に導入した。そして、最終成果物のCADデータを社内の共有ライブラリに保管しておくことで、誰でも取り出して活用できる環境を整えた。
このようにCADソフトの統一という観点から、同社は『AutoCAD LT』を全社で活用していったが、その一方で、新たな課題も露呈してきた。同社管理本部情報システム部情報管理課長の五十嵐善一氏は、「当時導入していた『AutoCAD LT』は、スタンドアロンライセンスだったので、インストールするPCの台数分、ライセンス費用が発生しました。たとえば、普段はCADを使わない社員でも、教育用に試しに使いたいとか、得意先から問い合わせがあったときに閲覧したいという要求が必ず出てきます。しかし、そうなると、その人のPCにも CADソフトを導入しなければなりません。そのうえ、毎年、新入社員が増えるたびに、新たにCADソフトを購入しなければならず、導入費用がかさむ一方でした。また、コンプライアンス(法令順守)の観点から、違法コピーなどを未然に防止する対策を施さなければなりません。しかし、そのためには、ライセンス管理をきちんと行える環境を整えておく必要があったのです」と語る。
そこで、五十嵐氏は、従来から取引のあった大塚商会に相談した。そのときに提案を受けたのが、ネットワークライセンスで購入できる土木設計用3次元CADソフト『Autodesk Civil 3D』だった。ネットワークライセンスとは、ネットワークに接続されたすべてのPCにソフトウェアをインストールすることができるが、同時に利用できるのはライセンス契約分のみとなる料金形態のことだ。一般的にネットワークライセンスの使用率は、30%前後だといわれている。したがって、本来なら100人分のライセンスを購入しなければならないところを、20〜30ライセンスの購入で済むので、その分、大幅なコスト削減が可能となる。また、どのPCからネットワークライセンス管理サーバにアクセスしているかも把握できるので、ライセンス管理もスムーズに行える。

さらに『Autodesk Civil 3D』は、『AutoCAD LT』で作成した2次元データをそのまま利用できるのでデータの互換性もあり、なおかつ、『AutoCAD LT』の基本機能をすべて網羅していたので、スムーズな移行が可能となる。そのうえ、3次元設計も行えるのだ。「ライセンス費用が大幅に安くなるうえに、今後の活用が見込まれる3次元設計も行えるようになるので、将来的にも有望だと判断しました」と五十嵐氏は語る。こうして同社は、2005年9月に『Autodesk Civil 3D』を20ライセンス導入した。これにより、従来の課題を解消し、同時に土木事業における3次元設計の開発環境を整備した。その際、これまで社内で使っていた『AutoCAD LT』は、施工現場の事務所のPCに振り分けて有効活用している。