
これまで同社では、企画段階でのプレゼンテーションを重視して、力を入れてきた。しかし、より一層、建主の要望への柔軟な対応と、それにより発生する業務の効率化を実現するために、今回、設計段階からのプレゼンテーションを重視し、『Autodesk Revit Building』(以下『Revit』)の導入を決めたという。
大槻氏は、「迅速に建主と設計上の合意を進めるためには、設計者自らが、プレゼン資料を作成するのが効果的です。そのためには、手間と時間をかけずに効率的に資料を作成できる環境が必要です。それを可能にしてくれるのが、『Revit』だったのです」と、導入を決めた背景を説明する。
従来、同社では、プレゼンテーション用のCG作成は、企画情報部の担当者が1名で行っていた。そのため、案件が多い場合には動画の作成まで手が回らない場合もあったという。また、企画情報部の担当者が設計担当者から図面データを受け取って、CGに起こすために、設計変更があると迅速に対応することが難しかった。

「ところが、この3次元CADであれば、図面から瞬時に立体的なパースを作成できます。設計段階でも手間をかけずにビジュアルの表現が可能なのです。アニメーション化して、建物の中を歩いているような表現も可能です」と、大槻氏は『Revit』の魅力を語る。さらに、プレゼンテーションで使用したデータは、設計にも素早くフィードバックできるので、より一層の効率化が期待できるという。
そのほかにも同社では、建主との打ち合わせには必ずノートPCを持参して、いつでもどこでも視覚的な説明を行うことを実践している。紙に印刷された資料だけの場合よりも、多くの情報や最新の情報を提供しやすいことに加えて、動画などを利用することで、建主の理解を深めることができるのだ。
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同社は、まだパソコンという言葉が一般的でなかった時代に、社員一人に1台のPCを使用させる「1人1台」にいち早く取り組んだ経緯があった。このことからわかるようにIT導入には積極的で、CAD導入に先立ってさまざまなソリューションを導入し、社内の情報共有に活用している。たとえば、東京の本社と札幌、福島、大阪、名古屋の各支社はインターネットVPNで結ばれており、内線電話としてIP電話、電子メールには大塚商会の『アルファメール』を採り入れている。また、ワークフローの効率化として、リンコム社の「リンコム ネクスト」を活用し、電子承認による業務の効率化も行っている。 「大槻氏は、「技術者の集団である当社では情報の共有化と有効活用は、簡単には行えません。技術者である設計者が自ら情報を発信し、互いに利用しやすい環境を整える必要があります」と現在の課題を指摘する。 |
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大槻氏はどうすれば社員一人ひとりが自分の持つ情報を皆で共有できるか考えた結果、現在、「リンコムネクスト」上に「社長フォーラム」や、技術情報を社内に公開する「失敗研究フォーラム」で、情報公開を積極的に行っている。逆説的だが、社長自らが失敗事例を公開することで、ほかの社員も情報を出しやすい環境作りを行っているのだ。具体的には、「リンコムネクスト」を利用した掲示板に提示されたさまざまな課題に対して、事例や意見が出され検討を加えるというしくみをつくっている。 |
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また、「FileMaker」を利用した物件管理システムを、営業ツールとして利用する試みもを行っている。具体的には、修繕事例など物件の管理情報に加えて、顧客の人事情報などを入力して、顧客管理ツールとして活用している。
このほか、同社では、毎月「月刊社長通信」と毎週の「週間社長通信」で社内への情報発信を行っている。大槻氏は、「幹部社員の動向や、会議の結果などを社内に周知することで、トップの意志を社員全員が理解できます」と情報共有の重要性を強調している。
同社の『Revit』の本格的な導入効果はこれからだ。ITを導入しても活用しきれない例は珍しくはない。しかし、導入初期にはうまくいかなくとも、大槻氏のように失敗から学ぶマインドと、適切なコンサルテーションを行うことで、次の成功への足がかりを築くことができる。永年つちかってきた大塚商会との信頼とフォローがあればこその関係といえよう。