
1972年に設立された株式会社中央設計は、医療施設、福祉施設を中心に手がけてきた。設計理念として「建築目的を遂行する主体は建主であり、その利益を守る」「建築は、その地域・施設に住む人や使う人たちのために作られるべきで、その人たちのための建築を追及する」「集団設計をする組織事務所を掲げる」などを掲げている。同社は施主(顧客)を、「建主」と呼び、住む人、使う人のための建築を追求、実現することで、多くの実績と信頼を築いてきた。
「建築家として、最もうれしいときは、建築ができ、そこへ人が入って、そこで活き活きと生活が営まれているのを見ることである」とは建築家 吉村 順三の言葉だが、その精神は、同社にも受け継がれている。
同社 代表取締役社長の大槻修滋氏は、「先代社長の永橋は、吉村氏の事務所で薫陶を受けました。そこで学んだ住宅設計のノウハウが、現在の私たちのビジネスに活かされています」と語る。
それまで『Jw_cad』を使い続けてきた理由について、同社 事業本部 クリエイティブ設計局 取締役局長 岡田 成人氏は、「CADシステムも進化し、図面と積算が連動したCADシステムが登場してきました。しかし、CADシステムには、第一に処理スピードが要求されます。そのような意味で、軽快に動作する『Jw_cad』は魅力的だったのです。また、当社の取引先である設計事務所、構造計算や意匠設計などの外注先は、『Jw_cad』を使っているところが圧倒的に多かったため、お客様との間のデータ互換性という意味でもメリットがあったのです」と語る。
たとえば同社が得意分野とする医療施設では、寝室となる病室、食堂、リビングとなるロビーやホールなど、住まいと同じ多様な空間が必要になる。住む人、使う人を大切にする精神がなければ、建主や利用者を満足させることは難しい。大槻氏は、「デザインが第一では、自己中心、自己満足に陥ってしまいます」と自らを戒める。
「そして、建主主体の建築を実現するためのもうひとつの方針として、同社は施工会社やメーカーと癒着を廃し、談合やダンピングなどを行わない経営方針を貫いている。設計の職能、建築家としてのプロフェッションを貫き、建主が主体となって事業を進め、その利益を守りきる姿勢が、建主のみならず、業者との信頼関係を築くうえで大きな要因となっているのだ。
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同社の業務は、調査企画、設計、工事監理、保守管理と大きく4つに分けることができる。大槻氏は、「企画から対応できる設計事務所は多くはありません。特 に当社のような企画部門を持つ事務所は少ないのです」と同社の強みを説明する。しかし、どんなにいい企画であっても、建主の要望と違ったり、設計者の意図 を理解してもらえなければ、着工後に建主と意見の対立を生む原因になってしまう。 |
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「われわれは図面を見れば、できあがりが即座にイメージできます。しかし、建主はそうではありません。図面を見ながら、ここが六畳の和室で、こちらが台所というふうに、ひとつひとつ理解できるようお客様に説明する必要があるのです」と、大槻氏は建主に設計図がイメージできるように伝える難しさを語る。しかし、2次元の図面だけでは分かりにくい場合でも、3次元で立体的に表現すれば、建主の理解力は飛躍的に向上する。とはいえ、部屋ごとにパースを作成することは手間と時間がかかりすぎるため、現実的ではない。そこで、ITの活用が不可欠になるのだ。
3次元CADを利用すれば、図面から瞬時にCGを作成できる。大槻氏は、「もちろん、CGではスケール感などは分かりませんが、少なくとも図面のどこが壁で、どれがドアで、どんな装置があるのかということは直感的に理解できます」とビジュアル化の効果を強調する。
建主と建築イメージを共有するための、同社のもう一つの理念が「参加型の共同設計」である。たとえば、病院を作る場合、院長と婦長、事務長に病院幹部など 5、6人が設計の決定に関わることが一般的である。その場合、もとになる設計案は設計者のイメージが中心になり、結果的に設計者任せになってしまうことが多い。
大槻氏は、「当社では、経営者側だけでなく、病院を利用する人たちを巻き込んで設計しています。たとえば、生協病院であれば、生協の組合員のみなさんに設計段階で参加していただいています。そのため、建設委員会が50〜60名になる場合も珍しくありません」と語る。そして、多くの人たちが参加し、合意するためには、全員がわかる完成イメージの提供と、わかりやすいプレゼンテーションが非常に重要になってくるのだ。
さらに同社には、医療施設、高齢者施設、保育施設、障害者施設に分けた4つのプロジェクトチームがあり、各チームが専門分野の建築研究を行っている。医療分野を例にとると、現在、医療改革により、関連する法律など病院を取り巻く環境が大きく変化している。プロジェクトチームを組んで、理想的な医療環境を専門的に分析・研究を行い、建主の要望に添った設計を目指そうとしている。